断熱性能について

以前、断熱気密の考え方について、ご質問を頂いたことがあります。普段から、よく問い合わせのあることでもありますが、一旦自分たちの考え方をまとめるいいきっかけになりました。支障のない範囲で自分たちの考えを公開したいと思います。

■まず、根本的な断熱性能については、施主ごとに求められる仕様を考えます。いわゆる省エネエコ住宅にも積極的に取り組んでおりますが、バランスが重要であるということをまず先にお伝えさせていただいています。 コストが許せば、より良いものを使い、性能値はもっと上げていきたいという思いはありますが、世界中の建材を比較したり、過分すぎるものはお住いの地域で必要ないのではと思うことは度々あります。 温熱環境的に、最高グレードの家にしたい、という要望は、当然あって良い話だとは思いますが、性能のグレード上げる場合は、建物のバランスやコストを把握しながら、優先順位を整理して検討する必要があります。後述しますが、数字では表れない性能というものがあり、総予算を踏まえて、広さや質など、様々な要望との兼ね合いとなると考えます。 今までの設計事例では、まずは「長期優良住宅性能程度」=「断熱等級4程度」をベース基準と考え、設計するうえでの目安としています。これは設計手にもよりますが、一年の中で最も暑い日、最も寒い日にエアコン冷房や暖房設備を動かして過ごせる程度の温熱環境だと私たちは考えます。このボーダーラインの窓は条件によっては結露することがあるので注意が必要です。

■気密性能について
注意すべき点は、大きく2点あると考えます。
①室内に外の空気(隙間風)が入らないこと。(=分かりやすい隙間を無くすこと)これは、少なくとも私たちが見積り依頼する工務店では、よほどの理解不足の施工がない限り、どこでも問題ない施工ができます。
②壁内に室内の湿潤空気が入らないこと。(=どこか分からない隙間を無くすこと)
冬期の暖房された湿潤空気が壁内に入り込むと、壁内の断熱材で内部結露を生じさせ、建物に悪影響を及ぼします。この「どこか分からない隙間」をいかに無くすかということについては、
工務店の技術力、施工精度、理解力が重要になってきます。そのため設計事務所の立場としては、工事中の監理業務を通じて、施工者に間違いのない施工をしてもらうことを意識し続けてもらうように、常に注意喚起することが大切であると考えています。施工者の自主チェックと合わせて、設計者(監理者)の立場でも、ダブルチェックを行うことが重要です。

断熱性能については、建物全体のバランスやコストを踏まえながら設計者側でコントロールしていくことが可能です。気密性能については、我々だけでなく、工務店(施工者)の意識、能力による部分が大きいです。設計者としては、施工者選定の際に技術力のある工務店を選ぶこと。また、工事中には確実な施工をしてもらうことを常に意識づけることが重要です。
そのために工事中の設計者と施工者のコミュニケーションを良くすることが大切で、上下関係のない、フラットな人間関係を築くことや、設計者、施工者双方でダブルチェックし、施工精度を地道に上げていくことが、気密性能を高めていくことにつながると考えています。

これまでの経験上、小屋裏エアコンや床下エアコンは、外皮の断熱気密性能を確保すること以上に、室内の空気の流れを把握し、建物の立体的な空間構成がそれにふさわしい作りになっているか?といったことを理解して設計してくことが、より重要であるように感じています。そのうえで、建物の方位や日射の入り方、軒の出、季節に応じた工夫を検討した設計を行うことで、より快適な住まいになると思います。これを実現できるかどうかは、設計者の能力、経験による部分が大きいと思います。

私たちは、今まで名古屋や東京で設計をしてきました。島根県は、都市部や太平洋側の地域とは気候が大きく違いますが、そのほかにも、暮らしの質や住まい方が違うことを実感しています。そのうえで、この地域に合った「設計作法」が必要だと考えています。

太平洋側と日本海側の気候の違いは、湿気や太陽効率や雨量の多さなどネガティブな部分が多いのですが、(それは長くなるのでまたの機会、とさせていただきますが)ポジティブな部分も当然あります。まず、中間期(真夏や真冬以外)の通風は快適で、窓をオープンにして自然の風をとり入れる暮らしも悪くないと思っています。東京や関西地区と違うことをしっかり理解することが大切です。なかなか都会では味わえない温度感、風の気持ちよさ、広々とした敷地も景色はとても良いものですし、家の中で暮らしと外の眺望が混じり合い、とても豊かな気持ちにさせてくれます。私自身思う事は、ネガティブな部分を意識しながら家を建てたことで、ネガティブな部分自体かなり小さくなりましたので、これからは、ポジティブな部分を伸ばしていきたいと思っています。

断熱性能や気密性能は、住宅設計においては重要な要素で、当然、私たちもそれらの性能を確保した設計としていきます。ただ、それは住宅を作っていく上での、一手段であるとも言えます。
必要な性能は確保したうえで、「より良い家を作るためにはどうするべきか?」を常に意識しながら設計するよう心がけています。私たちは省エネ計算など自分で行うことができますが、決して数字だけにとらわれることのない考え方があるこということ、建物性能と暮らしとのバランスを整えながら、この地域の気候や暮らし方にあった気持ちの良い住まいを作りたいと考えています。

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