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2022道の駅 ごいせ仁摩

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島根県のほぼ中央部にある、大田市に建設された道の駅です。大田市内初の大型木造公共施設で、名前の「ごいせ」はこの地域の方言で「いらっしゃいませ」を意味します。計画地一帯は世界遺産石見銀山遺跡のバッファゾーンに該当するため、計画段階から景観審議会との協議を経るなど良好な景観計画が求められました。山間に東西に伸びた敷地形状に沿って建物を配置し、物販・管理棟、レストラン棟、ステージ棟の3棟の主要建物が並びます。また、それらをつなぐ屋根通路や付属施設の他、バス停、RVパークやドッグランなど、地域の利用、観光客の利用の両方に対応しています。建物自体も大田市の材料・技術でつくり、道の駅で販売される商品や食とあわせて、「大田市を発信する新たなショールーム」となることを目指しました。

物販・管理棟とレストラン棟は、上空から見ると緩やかな円弧状としています。2棟の中央部分にはふところのある屋外空間をつくり、イベント時に多目的に使える広場としています。また、石州瓦葺きの屋根に緩やかなむくりをつけることで、円弧状の建物の中央部が凹んで見えないような視覚補正しています。設計段階から瓦業者と打合せを重ね、特注瓦ではなく標準品の瓦を使い、重ね代を調整しながら通常のやり方で葺くことでこの形状を実現しました。伸びやかな瓦屋根が描くラインで、周辺の山並みと調和する景観となりました。

建物に活用する木材は、構造材をはじめ、造作材・内外部仕上材など、使用する大部分が大田市有林から切り出した杉材を利用しています。切出しを行う山の選定から設計がはじまり、樹種・本数調査、伐採、製材、保管、乾燥、強度試験など一貫してコーディネートを行っています。構造材には県外での加工を要する集成材は使用せず、全て杉の製材を採用しています。接合部の加工も、地元プレカットと地元大工の手刻みで可能な架構とし、あくまで地場での流通・技術で実現できる計画としました。架構はテンションを使った張弦梁を採用し、出来るだけシンプルな木造空間としています。

ステージ棟の舞台には、令和3年に三瓶山で開催された「第71回全国植樹祭」のお野立所を移設して再活用し、石見神楽の公演などを発信する場となっています。この道の駅が、地域にとっての観光拠点、文化発信の拠点となるとともに、木材を有効利用のためのモデル事業として、循環型林業、木材振興、ウッドチェンジに寄与することを期待しています。

(飴屋工房・安藤建築設計室設計共同体による共同設計)